今後再生可能エネルギーを普及させるためには、VPPの存在はカギとなると言えるでしょう。

しかしこのVPPについて、まだ広く知られていないというのが現状の課題です。

今回は、VPP(バーチャルパワープラント)について解説していきます。

VPPとは

VPPとは、仮想発電所という意味です。

発電所ではあるものの、「仮想」であることが大きな特徴です。

従来、電気というのは1か所で発電され、それを各事業所や住宅などの施設にそれぞれ送られるものと考えられました。

VPPはそれに対して、企業・自治体などが所有する生産設備や自家用発電設備等

点在する小規模な再エネ発電や蓄電池、燃料電池等の分散されたシステムをひとつにまとめることをいいます。

そして専門の会社がそれらを統括し、調整を行います。

実際に関西電力がそれに当たります。この、VPPやデマンドレスポンスを通して、

電力を統合・制御する専門事業者のことをアグリゲーターと言います。

VPPが必要とされる背景

VPPの仕組みは深堀りしていけば更に細かくはなりますが、

簡単に説明すると上記のような内容になります。

しかしVPPというシステムは何のために存在しているのでしょうか?

それは、東日本大震災の時のことを思い出してみると分かると思います。

2011年、東日本大震災の際には電力需給がひっ迫し、計画停電がおこなわれました。

それをきっかけに、これまでのように需給のバランス調整を

大規模な発電所のみに依存することの是非が問われるようになりました。

また、近年の脱炭素化の流れによって普及が進む再生可能エネルギーについても、

日射量や風の強弱など天候の影響で発電量が左右されるため、

安定した電力供給が難しいという課題が持ち上がっています。

こうした背景から、これまでの供給側の取組だけでなく、

需要側のリソースを活用したVPPに高い期待が集まっているという訳になります。

VPPが主に活用されているのは、「地域」や「町」の規模感になります。

VPPの仕組みがあれば、地域全体で発電を行い共有しながら利用できるため、効率よく運用することができます。

足りないところに余った電力を回すことで無駄なく運用ができるほか、

電力が足りなくならないよう節電の意識を高めることにもつながるのです。

VPPのメリット

再生可能エネルギーの有効活用と普及拡大

VPPを普及させる最大のメリットは、再生可能エネルギーの有効活用ができるという点です。

VPPでは、複数かつ多数の発電システムから発生する電力を、

リソースとして一括制御することが可能です。

今まで無駄にされてきた小規模な発電システムから発生する余剰な電力も、まとまった電力として利用できるようになります。

太陽光発電での発電量が不足したときに、地域のほかの場所から電力を供給できるというシステムは、

再生可能エネルギーの信頼性を高めさらなる普及や拡大に貢献することが可能です。

低いコストで簡単に電力需給の調整ができる

VPPは、従来使われてきた大規模な発電施設などに比べて、

低コストで運用できるのが大きな魅力です。

1つの企業が1ヶ所の大規模発電施設から電力を供給する場合、発電施設を運営する費用が膨大にかかっていました。

VPPの場合は発電システムの一つひとつが小規模なので、コストが抑えられます。

さらに、電力は集約して供給されるので、余剰分を集めて不足しているところに回すという低コストでシンプルな方法を用いることができるのも魅力の一つです。

災害時の停電に強い

災害時に大規模発電施設がひとつ被害を受けてしまうと、大規模な停電が発生するリスクがあります。

この施設から電力を供給している広範囲の施設や家庭が、すべて影響を受けるためです。

VPPが導入されていれば、発電は家庭や企業など、小さくて数の多い発電設備で行われます。

すなわち、1ヶ所だけが大きな被害を受けるという状態がほぼ考えられなくなるということです。

VPPのデメリット

思わぬ経済的格差が生まれる可能性もある

VPPのような分散型エネルギー資源を主とした事業が拡大すると送電網の利用は減ります。

そうすると、分散型エネルギー資源を保有しない住宅、ビル等は負担が増えることになります。

結果として分散型エネルギー資源非保有者は、それを手にしようとしますが、資金によっては導入が難しい場合があります。

ですので、より一層の負担が発生してしまう可能性を秘めています。

導入には多額の初期費用・工事が必要

家庭や企業でVPPを利用するには、専用の設備が必要となります。

具体的にはHEMSのような専用機器や、あるいは蓄電池や電気自動車、HEMSに対応したエアコンなどの家電製品があります。

申し込むだけで誰でも利用できるものではありません。

対応設備が無い場合は新たに設置する必要があり、費用や工事が必要となります。

VPPの導入事例

三菱自動車工業株式会社の電気自動車を活用したVPPの構築事業

三菱自動車工業は、令和2年度の経済産業省の補助金制度を活用し、EV/PHEVをリソースとしたVPPの実証事業を開始しました。再生可能エネルギーの導入と電力系統安定化の両立を目的とし、2021年度以降の事業化を目指しています。

出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/newsrelease/2020/detailk806.html

竹中工務店の水素エネルギーを活用したVPPの構築事業

竹中工務店は、I.SEMと名付けた独自のエネルギーマネジメントシステムを用いるVPPを開発し、実証を行っています。これまでの蓄電池や発電機、電気自動車などに水素エネルギーを新たなリソースとして加えています。

出典:https://www.takenaka.co.jp/news/2020/10/06/index.html

横浜市のVPP構築事業

横浜市は2016年から、地域防災拠点に指定されている公共施設に蓄電池を設置しVPP構築事業を開始しています。横浜型VPPとの名称をつけ、平常時はVPPとしてシステムを運用し、災害時などは防災用電力として電力を活用しています。

出典:https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/ondanka/etc/vpp.html

最後に

再生可能エネルギー.comは株式会社サンエーが運営しております。

弊社は再生可能エネルギー事業の他、電気設備工事事業、次世代LED事業等、
お客様の生活の質を向上できるよう多岐に渡って事業を展開しております。

「エネルギー問題の解決につながるような取り組みをビジネスの中で実現したい」そんな思いから
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